2009年4月アーカイブ

ローコスト住宅

 最近、一般に定着していますが、「ローコスト住宅」という単語にどうもなれないと言うか、違和感を感じます。
 僕が以前勤務していた設計事務所でも現在お話を頂く案件でも、予算に余裕があって、自由に材料や面積を決定できる案件などほぼありません。
 新築の住宅でもリフォームでも、1.ご要望 2.予算 3.スケジュールの順にお伺いして仕事に取り掛かります。
 優先順位もこの3点で決まるように思います。
(設計が終わって、工務店さんの見積もりが上がってから1と2が逆転することは往々にありますが、全体計画では、1.ご要望が主となります)
 予算の範囲内で、ご要望を満たし、+αの設計を行う。そう考えると、予算に余裕などすぐになくなってしまうのですね。これは、技量が低いとか、経験が浅いとかという問題でもない気がします。
もちろん、多少の余裕幅を持って、こちらはご提案しますし、クライアントからは、予算を多少オーバーしても要望をすべて叶えたらどういったものになるか?と依頼されます。ここのせめぎ合い。なかなか難しいものがあります。
 ご要望をすべて踏まえたデザイン。「予算が足りないためにどこを諦めるか」という作業は、クライアントも設計側も苦心しつつ、いつもながら辛い作業と決断になります。

 さて、ローコストの話。
 何を持ってローコストと呼ぶか。予算が少ないからローコストなのか、坪単価が安いからローコストなのか。
 クライアントの方がはじめから「予算は十分にあるから好きにやっとくれ」は、多分、この先も稀な案件となるでしょう。
 一般的な話に戻ります。
 皆様、大切なお金ですから、その使い方もしっかり検討されています。
 こちらも、クライアントのご要望をしっかり聞いてご提案します。
 「そこには望んでいないから、もっとランクを下げていいです。」
 「ここはこだわりの夢だから、十分良いものにしましょう。」

 予算をシビアにコントロールするから部分的には安価なものでも、ある部分は1ランク上のものを選びます。
 シビアにコントロールされるからローコストかと言うとそうではないですよね。
 一般的なつくり方からもっと材料を減らして、簡単で安価にしたからローコスト住宅。これも違うと思うのです。
 「一般的なつくり方」を疑ってみれば、必要のない物や機能は沢山あるのではないでしょうか。
 そういったものを一つづつリストアップして取捨選択していく。
 ・・・予算コントロールの話に戻ってしまいました。
 こういった取捨選択の作業は、手間もかかりますし、創造的作業も十分に必要となります。材料や工法の知識も必要となります。
 時々耳にしますが、ハウスメーカーでも工務店でも予算が足りないから工事を断られて、結果、だめもとで建築家に依頼して、新築住宅を建てることができたという話を聞きます。確かに条件が悪ければ悪いほど、建築家に依頼するケースも増えるように思います。

「ローコスト住宅」
やはり、理解が難しく、安易に使える言葉ではない気がします。
一定の定義があればよいのですが、何千万円の予算を用意して家を建てるお客様に「ローコストですから」なんて、こちらから言えないですね。どうも、「ローコスト」と聞くとネガティブなイメージがしていけません。


 さて、設計者側から見た「ローコスト住宅」について。
 設計事務所の収入は、基本的に工事価格の○○%といった決め方が多いです。
(この決め方にもどうも納得ができないのですが・・・。これはまた別の機会で)
 つまり、工事金額が大きいほど、収入も多くなります。一般に工事金額が大きい→建物の規模が大きくなる→設計の仕事量が増える。ここまでは納得できます。
 しかし、ローコスト住宅となると、上記のような仕事量が増えるのですが工事金額が安くなる。頑張って、予算を下げる工法と方法を考えれば考えるほど、収入が減っていく。なんとも不思議な制度です。
 そこで、人様の設計事務所の話ですが、ローコスト住宅用の作り方をマニュアル化している事務所もあります。
 標準ディテールを作成して、いつも同じ工務店さんに工事をお願いして、1つ2つ、クライアントに対してユニークな部分を加えて、後は標準仕様。
 設計事務所も商売です。そういったシステムを作り上げることも、大変な労力と経験の上によって成り立っていることは十分想像ができます。
 お客様が納得して、満足して、喜んでくれることが第一の仕事ですから、その方法がいくつあっても文句はありません。
 しかし、せっかくの設計事務所。アトリエと呼ばれる体系ですから、「新しいもの」を毎回毎回、少しでも考えながら設計をしたいと思っています。
 若気の至りとお思いでしょうが、「予算も少なく、敷地も変形。住まい方のプログラムも複雑で...。」これこそ、挑戦し甲斐があるというものです。
 試行錯誤して、すこしづつ標準から外れながら、すこしづつクライアントの要望を叶えていく。結果、他にはない住宅が出来上がる。設計の醍醐味を感じます。

帰って来ました。

2ヶ月間の長期出張を終えて、昨日東京に戻ってきました。
気がつけば、桜の季節も終わり、僕の机の前には若葉の緑が萌えています。

その間、このホームページの更新もせず、ご訪問頂いている方には申し訳ありませんでした。
また、これから愚にも付かないことから、まじめな住宅論にいたるまで更新していきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
(写真は毎朝、マンスリーマンションから事務所に通う道で見る朝日です。冷えた空気のなか、遠くは菅平高原まで見渡せとてもキレイな風景でした。)

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