五角形の住宅。山梨県甲府市に建てられた2世帯住宅です。
竣 工 :2013年7月
所在地 :山梨県甲府市 敷地面積:261.11㎡
用 途 :専用住宅 建築面積:75.36㎡(1階:72.04㎡/2階:60.70㎡)
構 造 :木造2階建て 延床面積:132.74㎡
家族構成:夫婦・子供2人・祖父母 写 真 :
藤本 一貴
変形敷地を有効に使うため、建物形状が5角形となっています。
通り側の「正面」と大きな庭側の「内面」の二つの顔があります。
建物自体をご覧になっても、外からはこの建物が5角形であることは、きっと分からないと思います。
<通り側の正面>
旧国道側は車通りも多く、3台以上の駐車スペースの要望から、5m以上のセットバックを行うことが出来ました。
<庭側の内面>
正面側は、セットバックによりプライバシーが守られます(これから植栽を行う予定です)が、出来るだけ開口部を設けませんでした。
玄関も、風水的な考え方から、通りに面して開口を設けず、東側に向けて、1段奥まった設計としています。
玄関アプローチは基礎、外壁の色に合わせた砂利敷きとし、アプローチ部分にはあえてタイル等を貼らずにステンレス製の手すりと合わせてモルタル塗りとしました。これにより、玄関の木製扉が強調されます。
玄関内部は、ウォルナットの框を目立たせることで、高さの違いを強調し、高齢者への配慮を行っています。
近い将来車いすの使用が考えられるため、框高さは極力小さく(そうかと言って、きちんと高さに気がつく寸法)としました。
窓を作ること、リビングへつながる引き戸に大きなガラスを入れることで明るい玄関となりました。
内装は白い壁に天然木をつかった柔らかく、スッキリとした柔らかいイメージとしました。
部屋の形状は少し鋭角や鈍角の部分、平行した壁との取り合いにより、実際面積よりも広く感じると思います。
家具の設置を合わせて検討することにより、変形室の使い勝手の悪さが発生しないように極力注意しました。
室内にどこか1カ所、何かを飾る部分が欲しいものです。
季節の花や飾り、家族の思い出など。そのスペースがアイストップとなり、室内空間の価値が大きくなると考えています。
濃い色の壁の部分はリビング・ダイニングの中心となり、小さいながらも「枠」がニッチとなり飾り棚にもなります。
また、なかなか難しいテレビをこの部分に壁掛け設置します。
最近のAV環境は素晴らしく、この部分にはテレビだけを設置し、他の部屋に置いたレコーダーやパソコンと無線LANで接続することで、雑多な機器が正面に出てきません。
リビングを中心として、東側には祖父母のスペースがあります。
引き戸でつながった祖父母の部屋は、お茶の間と寝室があります。
寝室からリビングを通して庭を眺めることも出来ます。
部屋の奥行きによる室内の明るさのグラデーションが部屋の意味合いを強め、視覚的にゾーニングを意識させます。
(上の写真の正面がお茶の間、右側の扉が寝室です)
将来、介護が必要となる可能性が高いため、人が集まるリビングからすぐにアクセスできるように祖父母スペースをゾーニングしています。
1階のトイレへは、廊下だけでなく祖父母の寝室からも直接入ることができます。
昨今流行っていた(?)「将来の家族構成に対応できる可変性のある間取り」とはせず、きちんと壁・引き戸を設置しました。あれは設計者の思考停止、責任放棄のように感じます。
2階は、大きなテラスを中心に各部屋を計画しています。
テラスを通して、全ての部屋が明るく、それぞれの部屋からお互いの部屋を見ることが出来ます。
お施主様には実際計画していた意図が建物完成後に伝わり、うれしく思いました。
家の中から外を通して自分の家が見えるというのは、何とも楽しいものです。
唯一出来た長い廊下は、寝室を通して家の端から端まで見通すことが出来ます。
1階でも同じですが、家を端から端まで見通すことができると、家自体をとても大きく感じることが出来ます。
奥行きのなかにそれぞれのゾーンが広がり、部屋のつながりを1本の樹のように感じることが出来ます。
北側に計画された子供部屋は、廊下に面して入り口とは別に引き窓を設置することにより、明るく風が通るように計画しています。北側の部屋ですが、これだけ明るい部屋にすることができました。
PLAN-1F

PLAN-2F

5角形の建物は、設計段階でも複雑でした。
私の力量不足ですが、構造計算も難解となり、「木造2階建て住宅の構造計算です」となんとなく簡単そうに依頼した構造屋さんのは何度も修正をお願い致しました。
私達設計側はCADを使った「絵」を作成するに過ぎません。
施工については、工務店さんには一番のご苦労をお掛け致しました。
プレカットでの制作となったの柱・梁の取り合いはミリ単位となり、大工さんの手作業で作成しました。
内装のボード一つ貼ることについても、現場で基準点を設定し、一枚づつ長さを計りながら設置しました。簡単そうに見えて、最後の写真の様な屋根が傾斜が有りつつ、壁が微妙な角度に振れている箇所は、とても作り辛かったと思います。
しかし、文句一つなく、こちらの意図を汲んで下さった
家族建設の米山社長をはじめ、大工の棟梁、屋根板金の職人さんには感謝の気持ちで一杯です。
竣工写真は旧知の友人であった、建築写真家の藤本一貴氏に撮影してもらいました。
プロの建築写真家の撮影は朝日から夕暮れまで丸一日かかりました。
僕も藤本君も学生の時から専門の話をしながらよく飲んでいました。今回、仕事を依頼できたこと、とてもうれしく思います。
なによりも、今回設計の機会を下さったお施主様には一番の感謝をしています。
普段より、派手さのない、普通に見えて普通ではないこだわりの住宅を目指しているのですがその意図をご理解頂けたこと。本当にありがとうございます。