2014年6月アーカイブ

古府中町・S邸

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山梨県甲府市。歴史ある丘陵地に建てられた平屋建ての住宅です。

竣 工 :2014年3月         
所在地 :山梨県甲府市        敷地面積:198.80㎡        
用 途 :専用住宅          建築面積:70.38㎡
構 造 :木造2階建て        延床面積:70.38㎡
家族構成:夫婦・祖母         施 工 :家族建設

計画地は、甲府駅から北へ、武田神社を超えた山裾の土地です。
昔から史跡が多く点在し、景観保護区となっています。

とても恵まれているロケーションと土地の特性を生かすため、南東から北西方向に敷地一杯に建物を広げ、十分な日照と眺望を望めるような建物配置としました。

■配置計画と家の形

周辺の落ち着いて、穏やかな景観に合わせつつも、存在感のある建物形状としました。

長方形のシンプルな大屋根は、建物に落ち着きとシンプルながらも力強いイメージを与えます。

古くから日本の家としての形を継承した切妻屋根とし、しっかりと土地に根ざした平屋建ての上に傘がゆっくりと家を守るように、緩やかな屋根が覆い被さるイメージです。

妻壁部分も屋根と同じ材料で被い、大きな屋根の力強さを意図しました。

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張り出した軒は、南西の開けた眺望からの連続性を分断することなく、ゆっくりと室内空間につなげ、涼やかな室内環境をつくります。傾斜屋根は、甲府盆地から繋がる傾斜をイメージし、周辺の土地形状に逆らうことなく、地域に溶け込むことを目指しました。

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■風通しの良い室内環境

各室は、南西方向に大きな窓を設け、甲府盆地からの風を自然に室内に呼び込み、その風を逃がす窓を北東側にそれぞれ設置することで、風通しの良い計画としています。


■主寝室とお母様の部屋

主寝室とお母様の部屋を家の両端に設置することで、各部屋のプライバシーが守られる計画としています。主寝室とお母様の部屋には3帖の大きなウォークインクローゼットを設置し、納戸としても使える十分な収納スペースを確保しました。主寝室には、幅が約2.6mの造り付けの机を設置し、机下に引き出しや、プリンターなどの電気機器、机の上の吊戸には本棚を設置して、雑多になり易い机周りを整理し易く、シンプルですが、使い易いワークスペースを設けます。


■プライバシーについて

北東側窓はすべて型板ガラスとし、開口を小さくし、南西以外の開口は極力少なくすることでプライバシーを守ります。


■土間空間

玄関横の土間は、屋根が掛かっていることで雨天にも洗濯物を干すことができ、建物に奥まっていることから、周辺からの視線を遮ることが出来ます。また、廊下の窓と洗面脱衣室の窓を開ける事で、自然に風が通ります。

土間の天井部分と軒天を明るい色にすることで、暗くなりがちな廊下も反射光によって明るくなります。

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<平面図>
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内装は白を基調とし、木の優しさが現れるように配慮しました。
家具や扉は加工しやすく、表面の綺麗なシナ材を中心とし、取手や引手、ワークスペースの机材はアクセントとして堅く手触りのよいタモ材を使用しています。
上の写真にある神棚スペースは、古くから神殿・神祭具を作る檜材としています。
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窓枠に合わせて作った玄関収納です。
この収納だけは、濡れた手で触っても汚れを掃除しやすいステンレスの取手を使っています。

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リビングのテレビボードです。
上部にはドア枠と連続した奥行きの浅いカザリ棚を設置しました。
中央の横桟のついた扉は、AV機器やルーターなどの機器をまとめて収納することができます。扉の開閉方法を横滑りにすることで、凹凸がなくスッキリを見せることができます。
こちらの収納面がこのリビングの中心となり、アイストップとなります。画像では分かりづらいのですが、壁面を霧島壁という珪藻土塗りとすることで、存在感を出しています。

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それぞれ、寝室とお母様の部屋から眺めた写真です。
小さな窓に向かって、真っすぐに廊下が伸びています。決して大きな住宅ではないのですが、このように全体を見通す場所を作ると、家はより広く伸びやかに感じることができます。

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寝室は、共働きのご夫婦が最も長い時間を過ごす場所です。
そのため、寝室の壁には上記の霧島壁を採用しました。
調湿効果と消臭効果の機能を持ちながら、独特の風合いがあり落ち着いた寝室となりました。
天井と壁を同じ塗り壁とした場合、取り合いの部分がぼやけてしまいます。そのため、今回は取り合い部分に少しだけ溝を作る事で、シャープなラインを表現しました。

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最後に屋根のディテールについて。
景観保護区のルールの一つに敷地からの離隔距離というものが定められています。
道路に面する部分は、1.5m。隣地の場合は1.2mと普通の住宅地に比べとても大きいものとなります。
その離隔距離を利用して、雨樋を設置しませんでした。隣や道路に雨のしずくが飛散する心配が少ないためです。
地面には、犬走りを設け、その外側には砂利を深く沈め、雨が地面に浸透し建物が汚れないように配慮しています。
雨樋を設けないことにより、屋根の端部がとてもスッキリとシャープになります。
今回は、大きな屋根を表現したかったため、普段、木で作る破風板(屋根の端部です)も屋根材と同じガルバリウム鋼板で囲みました。メンテナンスがあまり必要でないという利点もあります。
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下から見上げたところです。
軒天(天井面)に見える銀色の部分は、通気口となります。
屋根裏には、日射によって暖められた空気が溜まります。その「暑い空気」を逃がすために設置しています。
屋根の一番高い部分にも同じ様な通気口が設けられています。そして、基礎コンクリートと壁の接合部にも通気口があります。
屋根裏で暖められた空気は比重が軽いため、高いところに上がって行きます。
そのとき、基礎上と軒天の通気口から外の空気が吸い込まれます。
この空気の流れによって、壁内部から屋根裏まで空気が循環し、湿気を逃がし、シロアリの被害を防ぎながら暑い夏を少しでも涼しく過ごす事ができます。
本来、昔から日本の住宅に用いられている知恵です。
しかし残念ながら。時々、この壁内通気が取り入れられていない物件を見かけます。もし、住宅を建てるor買うという機会があれば、ちょっと見てみると良いかもしれません。
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